2016年7月10日日曜日

ミュシャ『クオ・ヴァディス』の真実?

ネットで検索すると、そのほとんどで(ミュシャファンサイトや個人ブログですけど)
「ペトロニウスの彫像に愛を囁くリギアは、カーテン越しに覗くヴィニキスの熱い嫉妬の視線に気づいていない」
というような解釈で説明されていますが・・・。

この絵は、偉大な作家シェンキェヴィッチによる「クォ・ヴァディス」という小説の1シーンですが、この作品に描かれている人物が、小説の主人公(だと思われる)「ヴィニキウス」でもヒロインである「リギア」でもなかったとは驚きでした

ただ、堺アルフォンス・ミュシャ館協力という専門書「ミュシャの世界/新人物往来社 (編集)、KADOKAWA発行』に掲載されている『クオ ヴァディス』の解説にのみ「エウンケ(小説のエウニケとはカタカナの発音解釈の違いでしょうね)」と記されていて、
そう説明されているのがこの本だけだったので、逆にこの本がまさかの解釈ミス?などと疑ったりもしました^^;



自分はシェンキェヴィッチの「クォ・ヴァディス」を第5章までしか読んでいませんが(このシーンは第1章なので)それらの解説は間違っているのでは?と思いました。

本当のシーンは、

場所はペトロニウス邸宅にある香油室。描かれているのはペトロニウスの奴隷女の一人である「エウニケ」というギリシア娘。更にヤっていることは、美しいペトロニウスの肉体に恋焦がれるエウニケがペトロニウスの彫像をかりた自慰行為。

なぜ自慰行為と断言出きるかというと、シェンキェヴィッチの「クォ・ヴァディス」にそう示唆するような描写がはっきり書いてある^^;

このシーンの直前に、ペトロニウスとヴィニキウスは香油室で奴隷女たちに高級なアラビア香油を塗るマッサージを受けていますが、その直後二人は食堂へ移動します。
香油室に残った6人の女たちは後片付けを始めます。すると隣の納涼室からカーテン越しに浴場奴隷の男たちが声をかけます。女たちはすぐに作業を中断し浴場へ移動、淫楽のひとときに興じます。
ただし、エウニケだけは一人で香油室に残り、隣の騒ぎを尻目にペトロニウスの彫像にしがみつき、その女神のような美しいバラ色の体を押し付けて唇を合わせるのです。



それなら、カーテンを開いて覗いているのは誰なのか?
小説にはこのような人物がいた描写はなくエウニケは誰の目にも触れずに一人で彫像にキスをしているのですが・・・。

このような奴隷たちの乱行情事をペトロニウスは知ってはいたものの、敢えて触れずに見て見ぬふりをしていました。人を罰することが嫌いなペトロニウスのイキな計らいということなのですが、だとしたら、このカーテンを開けている人物はペトロニウスであり、実際にその場にいるわけではなく、見て見ぬふりをしている事実を象徴表現していると考えられます。

結果!
この作品に描かれているのはエウニケという奴隷女一人だけ
・・・ということになるわけです^^




ただし・・・
シェンキェヴィッチの「クォ・ヴァディス」を読破すれば、あるいはリギアがペトロニウス邸宅の香油室でペトロニウスの彫像に熱く囁きかけ、それをヴィニキスが目撃した!・・・というシーンがあるのかもしれませんけど???
なかったとしても、深読み解釈でリギアとヴィニキスであるという根拠があるのかもしれませんけど???
なぜなら、
この作品が発表された当初は「ペトロニウスとヴィニキウス」というタイトルが付けられていたという事実もあるらしいのです??
(個人ブログからの情報なので出処は不明です)

ただ、手元にある専門書には「シェンキェヴィッチの「クォ・ヴァディス」の最初の章からのシーン』と、はっきりそう書かれているので、SLとJOGの美術館の解説はそのようにしようと思います^^



いや〜古本ですがシェンキェヴィッチの「クォ・ヴァディス」木村 彰一 (翻訳)を買ってよかった!
(送料込みで¥299・上巻のみ)





0 件のコメント:

コメントを投稿